2025 J2 第1節 ジュビロ磐田vs水戸ホーリーホック/新戦力と既存戦力が融合して新戦術が機能し見事な開幕戦勝利

スタメン

CFにペイショット、トップ下に佐藤凌我、WGは左に倍井謙、右にジョルディ・クルークス、ダブルボランチは上原力也と中村駿、SBの左に松原后、右に川口尚紀、CBはグラッサと江崎巧朗、GKはキャプテンの川島永嗣。

昨年の課題は走力と球際の激しさだった。走力面では守備時にいかに連動して早くボールに寄せるか、攻撃時に早くボールホルダーの味方をサポートできるか。

新戦術が早くも機能

この試合、磐田は両サイドのクルークスと倍井が高い位置で開いてポジションを取り、攻撃時には彼らにスペースがあるうちにボールを預けるのが主な攻撃パターンとなっていた。

サイドに預けて、WGが突破をしかける間に中央ではボランチも含めてゴール前に上がってクロスのターゲットを増やす。

15分にはボランチの中村が流れの中からゴール前でヘッドを放つシーンもあった。

また、両WGにスペースを与えるためにもGKからのリスタートはショートパスを使ってビルドアップし、相手の前進守備を引き出す。

既存戦力も能力を発揮

新しい戦術が効果的に機能して、監督のやりたいサッカーが表現できていた。

去年から引き続きの選手の良さが活かされていたのもポジティブな変化だった。

ボランチの中村駿は攻守でボールに絡むシーンが多く、この戦術に合っているようだ。ボールの展開を読んで効果的なポジショニングが出来ているからだが、去年はスペースも時間もない中で激しいデュエルを強いられることが多く彼の良さが活かされにくい状況が多かったが、この試合では生き生きとプレイしていた。

またペイショットも去年は前線で孤立していることが多く、なかなかボールを収めることができなかったが、今年は様々サポートがあり去年よりも攻撃の起点になれる場面が増えていた。トップ下の佐藤やボランチが早くサポートに来てくれたり、佐藤はペイショットを飛び越えてボールを受けようともする。また両WGも開いてマークを釣り出しているし、押し込んだ場面では両SBが中に絞って、WGも含めた前線の選手をサポートしている。

ある程度、攻撃の形は見せたがゴール前のフィニッシュはそこまで決定的と言える場面は少なかった。

前半はスコアレスで折り返し。

後半は磐田は交代なしで再開。

後半は立ち上がりから水戸の前線からの守備に引っかかり始めて、危険なシーンが何度か発生する。ここは水戸のフィニッシュ精度にも助けられて失点は免れるが、後方からのビルドアップが戦術のカギとなるため、ここを突破して前線に繋げられるか、引っ掛けられて失点するかは今後の試合でもキーポイントになりそう。

狙い通りの先制点

53分に磐田は嬉しい先制点。

佐藤凌駕が起点となり、クルークスをフリーにしつつ縦に抜けたクルークスに繋ぐ。右サイド高い位置で完全にフリーになったクルークスは低いゴロのクロスをゴール前に送るとペイショットが中央で潰れて大外の倍井が押し込む。

ハッチンソン監督が狙ったサッカーの理想的なゴールの形だったろう。

佐藤がうまく起点となれたのは上原のワンタッチパスによるもの。水戸の縦パスがこぼれたところをグラッサが頭で上原に繋ぐ。ここで水戸の川上と山崎のダブルボランチが後ろ向きの上原に寄せたところを、上原がダイレクトボレー気味に佐藤にパスを繋いだため、佐藤が水戸のダブルボランチのマークを受けずにフリーとなって前を向けた。さらに水戸の左SB大森は攻撃のポジションをとっていたのでクルークスにはCBの牛崎がマークについていたが、フリーで前を向いた佐藤のチェックに牛澤が前に出たためクルークスが完全にフリーになった。

この後は後方からのビルドアップで水戸の前進守備をかわすことができれば磐田の攻勢になり、厚みのある攻撃ができるようになる。

磐田の右SB川口は献身的に走って、クルークスをサポート。昨年もクルークスは独力で数少ないチャンスを作り出していたが、この試合は川口のサポートもあり、ボールを受けて前向きのチャレンジがたくさんできていた。

勢いそのままに追加点

押し込み続けた磐田にさらにチャンス。ペナルティエリア内で前を向いてプレイしたペイショットの切り返しにたまらず牛澤がスライディングで倒してしまう。

これがPK判定となり、ペイショットがきっちり決めて追加点。

ハイライトで見ると牛澤の不用意なファウルにも見えてしまうが、ここに至るまで磐田の分厚い攻めを受け続けたことで、かなり圧力を感じていたのだろう。

セットプレイで試合が止まる時間もあったが57分頃から磐田にボールを保持し続けられ、60分に一度水戸が奪うも単発の攻撃に終わり、その後は65分頃まで磐田のボール支配で揺さぶられ続けていた。

このボール支配が続いていたのもずっと磐田がボールをキープしていたというよりは佐藤凌駕を中心とした走力で、たとえ水戸にボールを奪われてもすぐに奪い返すことができたため、磐田の支配が続いていた。

68分にペイショットと上原がOUTして、渡邊りょうと金子大毅がIN。

また70分に倍井が足を攣って交代。代わって入るのは角昴志郎が入る。この選手もドリブルに魅力のあり、倍井が下がってもこういった選手が出てくるのは非常に頼もしい。

去年は古川陽介が海外移籍してからはサイドで縦にドリブル突破をしかけられる選手がいなくて攻撃力の面で苦戦していたので、そこかれ学習しての選手編成だろう。

止まらない得点と水戸の反撃

76分に角が縦に仕掛けてファウルを受けるとFKを中村が蹴ると、ゴール前の混戦で誰も触らずゴールに吸い込まれる。

直後の78分、水戸に得点を奪われる。長尾から江崎と川口の間を通したパスに川口の外側から水戸の大森に走り込まれてゴール前に低いクロスを入れられる。中央で、難しい状況・体勢だったが安藤に決めきる。

3点奪って少し気が緩んだか、特に縦パスを通した長尾のチェックが甘かったところが問題。また、長尾がフリーで前を向いたので川口が中に絞って縦パスのスペースを消しつつ外の大森にパスが出た時にチェックに行けるポジションを取るべきだったか。試合後のインタビューでハッチンソン監督がチームの守備の原則に逆らった守備と話していたので守備の決め事でミスが出たようだ。

90分に松原后とクルークスが下がり、為田大貴と川崎一騎が入る。

このままクローズしたいところだったが94分に失点。磐田の3点目と似たような位置でファウルをしてしまい、このFKを大外に蹴られて多田が頭で折り返したボールを沖田に詰められる。

この時間帯かなり水戸に押し込まれて2次、3次と攻撃されていたのでたまらず佐藤がファウルをしてしまった。

さらにFKの場面で多田をマークしていた江崎が振り切られたのが大きかった。ただ、長尾の蹴ったボールも良かったし、江崎も対応が難しかったのは間違いない。

佐藤がファウルした場面も体力的にキツイ状況だったので、押し込まれ続けたところを課題と考えるべきか。

このまま3-2で試合終了。

素晴らしい開幕戦

2失点したのは反省点だったが、開幕戦を勝利で飾れたのは大きい。しかも、狙った形での攻撃が機能したことも好材料。

ただし、後方からのビルドアップに付け入るスキがある点は、今後のライバルチームも確実に狙ってくるので、対策を講じたい。

しかし、この試合のスタメンを務めた新戦力の佐藤凌駕、川口尚紀、倍井謙、江崎巧郎が機能したのがとてもよかった。

佐藤は運動量が豊富で献身的に攻守でボールに絡んだし、川口も高い走力でクルークスを的確にサポートし、チームの攻撃力をアップさせていた。

倍井は得点もさることながら、こちらも豊富な運動量で攻守に貢献。ボールを受ければ縦の推進力でチームの攻撃を牽引した。

江崎も失点に絡んだが、全体的にはそつなく守備をこなし。ハッサンヒロに代わってのスタメンには文句なしの結果を出した。

これら新戦力と既存戦力を新戦術に落とし込んだハッチンソン監督の手腕も素晴らしかった。

さらには選手層の面でも期待を感じた。今日、途中から入った角や渡邉りょうも結果を出したし、少ない時間で出場した為田や川崎以外にも昨季の主力だった松本昌也も控えていた。ベンチ外にはハッサンヒル、藤原健介、西久保駿介、植村洋人など昨季の出場経験豊富な選手たちもいる。

開幕戦は勝利で飾れたが、2節以降の相手はこの試合を分析して磐田に向かってくる。これを跳ね返して連勝をして自信をつけて開幕ダッシュを決めたい。

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